80席の居酒屋が潰れないラインはいくらか。固定費から計算します

宮崎で「UTAGE」という80席の居酒屋をやっています。客席を20席潰してステージを作った店です。

この記事では、この店が潰れないために必要な売上はいくらかを計算します。

先に断っておきます。

実際にいくら売れているか、いくら残っているかは書きません。

書くのは「いくら必要か」のほうです。儲けの公開ではありません。

ただ、こちらのほうが役に立つと思っています。他人の店がいくら儲けたかを知っても、自分の店の役には立ちません。でも計算のやり方が分かれば、そのまま自分の店に当てはめられます。

結論を先に書きます。

13卓ある店が潰れないラインは、4卓です。

そこに至る計算を、全部書きます。

まず、毎月出ていく金

客が1人も来なくても出ていく金です。80席、宮崎、1店舗ぶんの実数です。

項目月額
家賃30万円
人件費(20人弱の体制)80万円
水道光熱費15〜20万円
リース・通信・保険・著作権料など5万円
合計約135万円
※ この金額に、自分の人件費は含んでいません。

ここに食材と飲料の原価は入っていません。原価は客が来た分だけ増える金なので、固定費とは別に扱います。

うちの原価率は30〜35%で管理しています。飲食店としては標準的な範囲だと思います。


損益分岐点の計算

難しそうな言葉ですが、やることは割り算1回です。

売上が100万円入っても、そのうち3分の1は原価として出ていきます。手元に残るのは約67万円。この残りで固定費135万円を払わないといけません。

固定費135万円
÷ 粗利率(1 − 原価率33%)0.67
= 損益分岐点約200万円/月
※ 損益は税抜で計算しています。

月200万円売って、ようやくゼロです。ここを1円でも下回ると赤字になります。

月25日営業なので、1日に直します。

1日あたり、約8万円。


それは、何人ぶんか

金額のままだと実感がわかないので、人数に直します。

うちの客単価は平日4,000円、週末4,500円(税込)です。

1日に必要な売上約8万円(税抜)
税込にすると約8.8万円
÷ 客単価4,000円約22人

1日22人。80席の店で、22人です。

卓に直すと、もっと分かりやすくなります

うちは6人がけのテーブルが13〜14卓あります。それで80席です。

22人を6人テーブルに割り振ると、こうなります。

13卓のうち、4卓。それが生きるか死ぬかの線です。

店に立っていると、この感覚は体で分かります。4卓埋まった時点で、その日は最低ラインを越えた。そこから先が、店の取り分になります。

逆に言うと、3卓で終わった日は赤字です。客が来ても、来なくても、その日の5万4千円は出ていっています。


「満席」でも、席は埋まっていません

ここは、店をやっていないと分からない部分だと思います。

金曜・土曜・祝前日は、ほぼ満席になります。断る日もあります。でも「満席」といっても80人入っているわけではありません。

満卓と、満席は違います。

6人席を2人で使われることが、よくあります。2名の予約でも、空いているのが6人テーブルならそこに通すしかありません。

席数80席
卓が全部埋まった日の実際の人数60〜70人
80人入る日稀

つまり、この店の実力は80席ではありません。実質65席くらいの店です。

席数だけ見て「80席あるから月いくら」と計算すると、実態より2割以上大きい数字が出ます。物件を探している人は、ここを見誤らないでください。席数ではなく、卓の組み方で売上は決まります。


だから、貸切が強い

ここまで読むと、次の話が理屈で分かると思います。

1組80名の貸切なら、80人がちゃんと入ります。6人席に2人という無駄が発生しません。

実際に入る人数
通常営業で卓が埋まった日60〜70人
1組の貸切80人

前にステージを作った記事で「貸切は通常営業の2倍の売上になる」と書きました。その理由がこれです。気合いでも運でもなく、席の埋まり方が構造的に違うだけです。

そして貸切の問い合わせが来る理由の1つが、ステージがあることでした。20席潰して作ったステージは、ライブではなく貸切で元を取っています。


自分の店で計算する方法

やり方は3ステップです。電卓があれば5分で出ます。

  1. 毎月必ず出ていく金を全部足す(家賃・人件費・光熱費・リース・保険など)
  2. それを「1 − 原価率」で割る(原価率30%なら0.7で割る)
  3. 営業日数で割って、客単価で割る

出てきた数字が、その店が生き残るために毎日必要な客数です。

ここで大事なことを1つ。

自分の給料を、固定費に入れて計算してください。

この記事の135万円には、自分の人件費が入っていません。だから正直に言うと、本当の損益分岐点はもっと上です。

個人でやっている店は、ここを抜いて計算しがちです。「なんとか回っている」と思っていた店が、自分の給料を入れた瞬間に赤字になることは普通にあります。

自分がタダ働きしている前提の黒字は、黒字ではありません。


実際に超えているのかについて

最初に書いたとおり、実際の売上と利益は公開しません。

取引先も従業員も同業者も、この記事を読める場所にいます。店の中身を全部さらす必要はないと思っています。

ただ、1つだけ書いておきます。

超えていなければ、店はとっくに無くなっています。

コロナで営業できなかった時期もありました。そのときに客席を潰してステージを作りました。今も続いているというのが、答えのかわりです。


まとめ

  • 固定費は月約135万円(家賃30・人件費80・光熱15〜20・その他5)。自分の給料は含まない
  • 原価率は30〜35%で管理
  • 損益分岐点は月約200万円(135万 ÷ 0.67)
  • 1日にすると約8万円 = 客22人 = 6人テーブル4卓
  • 13卓のうち4卓が、生きるか死ぬかの線
  • 「満席」でも実際は60〜70人。6人席を2人で使われるから
  • だから1組80名の貸切は、通常営業より構造的に強い
  • 自分の店で計算するときは、必ず自分の給料を固定費に入れる

この店にステージを作ったときの費用は、こちらに全部書きました。→ 居酒屋にステージを作りました。100席の店で20席潰して、かかったのは25万円

同じ計算をライブハウス側でやると、ノルマがある理由が見えてきます。→ ライブハウスが儲からない理由と、ノルマがある理由

楽器店に10年、飲食に20年。今もバンドをやっています。→ プロフィール

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