チケットが売れないバンドへ。売り切っていた側と、ノルマを課す側の両方から書きます

チケットが売れない。ノルマが埋まらない。この記事にたどり着いたということは、たぶん今その状態だと思います。

自分は、売り切っていた側と、ノルマを課す側の両方にいました。

  • 高校生のとき、自主ライブでチケットを毎回完売させていた
  • そのあと楽器店に10年いて、フライヤーを置く側にいた
  • 今は居酒屋にステージを作って、バンドにノルマを課す側にいる
  • そして今もバンドをやっている

その4つの立場から書きます。精神論は書きません。

先に言っておきます。昔の話は、そのまま真似できません

自分がチケットを売っていたのは1989年、高校3年のときです。宮崎市でした。

この時点で、正直に言っておかないといけないことがあります。

あの頃はバンドブームの真っ最中で、今とはオーディエンスの絶対数が違いました。

これは努力の量の話ではありません。母数の話です。

クラスにバンドをやっている人間が何人もいて、ライブに行くこと自体が普通の遊びでした。「今度ライブやるんだけど」と言えば、話が通じる相手がそこら中にいたんです。

今は違います。同じことを同じ熱量でやっても、返ってくる数は少ない。それは、あなたのせいではありません。

だから「昔はこうやって売れた」という話を、そのまま持ってくるつもりはありません。それでも書く理由は、売り方の中身のほうは、今もほとんど変わっていないからです。


実際にやっていたこと、全部

1本のライブで、だいたい50枚。ハコの大きさによりますが、そのくらいでした。

やっていたのは、この3つだけです。

やっていたこと中身
学校で手売り直接会って、手渡しする
友達経由友達に、その友達へ声をかけてもらう
楽器店に置いてもらう音楽をやる人が集まる場所に置く

ひとことで言うと、とにかく口コミです。それ以外の手段がありませんでした。

1989年です。SNSはありません。ケータイもありません。宣伝の手段は、口と紙だけでした。

その年、ヤマハのティーンズミュージックフェスティバルという大会の第3回・九州Cブロックで優勝しました。ただ、正直に言うと、優勝したから売れたというより、売っていたから人が集まって、その勢いのまま出たという順番でした。


ハコ側に回って、はっきり分かったこと

今は自分が、バンドにノルマを課す側にいます。宮崎で居酒屋をやっていて、客席を20席潰してステージを作りました。

そこで分かったことがあります。これは知らないと、ずっと損をします。

ハコの常連が、あなたのライブを見にくることはありません。

ライブの日に、うちの常連さんがふらっと来ることはあります。その人がそのまま入場したことは、経験上ほぼありません。99%ないです。

つまり、その日の客席にいる人は、全員あなたが呼んだ人です。

「いい演奏をすればハコの客がついてくれる」と思っていた時期が自分にもあります。そうはなりませんでした。飲みに来ている人は飲みに来ているのであって、隣で始まったライブに入場料を払う人は、ほとんどいません。

これは1989年も、今も、まったく同じでした。だから声をかけるしかないんです。手段が増えただけで、構造は35年変わっていません。

店側の損益がどうなっていて、なぜノルマという仕組みがあるのかは、こちらに全部書きました。→ ライブハウスが儲からない理由と、ノルマがある理由。店の損益を全部書きます


自分がいた楽器店は、断りませんでした

ここが、この記事で一番伝えたいところです。

自分は楽器店に10年いました。フライヤーやチケットを持ってくるバンドを、受ける側で見ていました。

結論から言います。

持ってきたバンドを、基本的に断ったことはありません。

デザインが上手いとか、有名なバンドだとか、常連だとか、そういう基準で選んでいませんでした。持ってきたら置く。それだけです。

理由は単純で、みんな頑張っているからです。楽器店にいる人間は、たいてい自分も楽器をやっています。頑張っているバンドのフライヤーを断る理由がありません。

しかも、店側にもメリットがあります

ここも正直に書きます。店は善意だけで置いているわけではありません。

フライヤーを持ってきたバンドは、その店の常連になります。弦を買いに来る。シールドを買いに来る。次の機材を相談しに来る。

店にとっては、置き場所を少し貸すだけで顧客が1組増えます。割のいい話なんです。

だから、こう考えてください。

「置かせてください」は、お願いではなく取引です。

頼むのが申し訳ないと思って、頼んでいない人が本当に多いです。そこで止まっているのが、一番もったいない。

ただし、これは自分がいた頃の、自分がいた店の話です

ここは、はっきり書いておかないといけません。

今書いたのは30年ほど前の話で、しかも自分が働いていた店の話です。その楽器店も今は経営者が変わっていて、どういう方針でやっているのか、正直なところ分かりません。

ほかの楽器店が、同じように快く受けてくれるかどうかも保証できません。

断る店もあると思います。スペースの都合もあるし、方針として置かないと決めている店もあります。それは店の判断です。断られたときに「冷たい店だ」と思わないでください。

書きたかったのは、こういうことです。

断られて当たり前だと思って、頼んでください。それでも置いてくれる店はあります。

楽器店、練習スタジオ、中古楽器屋、音楽をやる人が集まる飲食店。置ける場所は、まだ町に残っています。3軒に断られても、4軒目が置いてくれればそれでいいんです。

頼まなければ、ずっと0枚のままです。


ノルマが埋まらなくても、それだけで切られはしません

これも、ハコ側にいるから書けることです。

うちはメンバー1人につき3枚のノルマを設定していますが、正直に言うと、完全には回収しきれていません。差額は店が被っています。

声をかけて回っても売れないことはあります。それは仕方がないです。誰にでもあります。

ただ、チケットも売らない、ご飯も食べに来ない。それが続くと、次のライブに誘わなくなります。意地悪ではなく、必然です。

店が見ているのは、売れた枚数ではなく、連絡が続いているかどうかです。

だから、ノルマが埋まらなかった月ほど店に顔を出してください。普通に飲みに行くだけでいいです。それで関係は切れません。

一番まずいのは、気まずくなって連絡が途絶えることです。店側から見ると、それは「もうやる気がない」という返事に見えます。


SNSは、声かけの代わりにはなりません

今もバンドをやっています。ボーカルとギター、あとは作詞作曲です。SNSはFacebook、Instagram、Threadsを使っています。

その上で書きます。

とにかく声かけ。もちろんSNSの活用も。

この順番が答えです。声かけが先で、SNSが後。逆ではありません。

ライブの告知を投稿するのは、宣伝としては正しいです。でもあれは、1989年に電柱にチラシを貼っていたのと同じです。見た人が来るかもしれない、という話であって、誰かに来てくださいと言ったことにはなっていません。

投稿は、全員に向けたものです。全員に向けた言葉は、誰にも届きません。

来てくれるのは、名前を呼んで誘われた人です。DMでも、電話でも、直接でも構いません。相手が1人に特定されているかどうかだけが違いを生みます。

50枚売っていたときにやっていたのも、結局これでした。手売りというのは、1人ずつ顔を見て渡すということです。


まとめ

  • 昔売れたのは母数が多かったから。同じ数を目標にしなくていい
  • ただし売り方の中身は35年変わっていない。手売りと口コミだけ
  • ハコの常連は、あなたのライブを見にこない。客席にいるのは全員あなたが呼んだ人
  • 自分がいた楽器店は断らなかった。置き場所を貸す代わりに常連が増えるから。ただし今の他店が同じとは限らない。それでも頼まなければ0枚のまま
  • ノルマが埋まらないこと自体では切られない。連絡が途絶えることで切られる
  • SNSの投稿は電柱のチラシと同じ。名前を呼んで誘った人だけが来る

最後に

チケットを売るのは面倒くさいです。頭を下げるのは気が重いし、断られると単純にへこみます。今も自分でやっているので、よく分かります。

それでも、人が入っている日のライブは全然違います。演奏する側も、見る側も、店の側も、全部いいんです。逆に、がらがらの日は誰も得をしません。

だから声をかけてください。断られてもゼロに戻るだけで、マイナスにはなりません。

楽器店に10年、飲食に20年いて、今もバンドをやっています。演者の側もハコの側も見てきました。その立場から書いています。→ プロフィール

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